「RPGの村人」と呼ばれた人々についての考察
目次
はじめに
この記録は、私が移住したとある村に住む、「まるでRPGに登場する村人のようだ」と言われた人々についての考察であり、私が完全な村人となる前に残しておくためのものである。
私が村人となり、村人になる前の記憶を失ってしまったとしても、この記録が後世に残り、のちの人々の役に立つことを願う。
「RPGの村人」と呼ばれた人々
結論から言ってしまえば、とある会社のメンバーを指す。かつて私がこの会社の顧客だった時に、一緒に働いていた同僚K が「あの人たちって、RPG の村人みたいですよね。」と言っていたのがきっかけである。
彼らは概ね開発者か、もしくは開発者出身である者がほとんどである。彼らのコミュニケーションは Backlog を使ったテキストが主であり、彼らを直接見たことがある者は、近隣に住む村の人々のみだという。
同僚 K 曰く、彼らがまるで RPG の村人のように見えるいくつかの特徴があるのだという。
ここでは、K の発言と、そこから導き出される村人の特徴について記していきたいと思う。なお、私は村人が好きであることだけ初めに述べておく。
考察1. 村人は、一問一答形式
これが村人の村人たる一番の所以かもしれない。
村人のコミュニケーションは常にシンプルである。
「A は B ですか?」に対して「B です。ただ、C の場合もあって…」などという但し書きはつけない。
常に答えは「はい、B です。」か「いいえ、B ではありません。」のどちらかだ。
ゆえに、もし村人の回答に不足を覚えるのであれば、尋ねかたを変えなければならない。
「A は B ですか? もし、C や D である場合はEのようにしてください。」といったように。
考察2. 村人は、必要最低限の言葉しか発さない
村人のコミュニケーションは常にシンプルである。
彼らは枕詞などといった冗長なものは使わない。
「申し訳ありませんがそれはできかねます。」ではなく、「できません。」と言う。
「お手数ですがご確認よろしくお願いいたします。」はコメントの末尾に入れない。
というか「余計な言葉を含まずに、シンプルに用件のみを伝達すること」は彼らのポリシーであり、「余計な言葉に気を囚われず、常にスピード感を持って対応し、最速でアウトプットを出すこと」が彼らの美学なのである。
もし村人に、そっけなさや塩対応っぽさを感じるのであれば、むしろ手厚い応対を期待しない方が身のためだ。「早く対応してくれてありがとう」くらいに思っておいた方が精神の健康には良いだろう。
考察3. 村人同士は、表面下で通じ合っている
これは、私が村に入るまで知らなかったことだ。
顧客の立場であった時に見た村人同士のコミュニケーションは、とてもそっけなかった。
彼らは無言で、Backlog 上で担当者を別の村人に変更し、新たに担当になった村人は無言で対応し、そして顧客にボールを投げ返していた。
それはまるで、役所で味わうような「たらい回し」に見えたものだ。(なおこれは、前述とは異なる元同僚Aも同じことを言っていた)
だが、実は彼らは無言ではなかった。
実は彼らは Typetalk というチャットツールを使っており、そこで顧客の問い合わせに対して調査を行なったり、アイデアを出し合ったり、誰が担当するか相談しあったりした上で Backlog で担当者の変更を行なっていたのである。
…まあ、Typetalk でやりとりしているから良いとは思うんだけど、せめて顧客にひとこと「別担当から回答いたします。」などと一言添えてから担当者変更をするとだいぶ印象違うと思いますよ、と思うけども。
考察4. 村人は、村外の人がわからないことがわからない
村人のコミュニケーションは、基本的にソースコードだ。
例えるなら「土を見れば今年の野菜のできがわかる」のような感じなのだろうか。
「ソースコードを見れば伝わる」ことが多いようだ。
それゆえ、ソースコードを見てもわからない人の気持ちは基本的にわからない。
また、WordPress コミュニティに長く属する村人が多いからか、WordPress の思想や仕組みがわからない村外の人々のことも基本的にはわからないように私には見える。
考察5. 村人は、能力が高く、忙しい
これは、この村に限ったことではないのかもしれない。
さほど大きくない、というか小さな村であると、一人ひとりに求められる期待領域は広く、かつ自律的に生活することが求められる。「自分の畑だけ守れば OK」ではなく「村を守る」ことがミッションだからである。
ゆえに、「私は畑仕事の中でも、種植えしかしません」のような人や「明日から魚を獲れと村長に言われたが、やり方がわからないので教えてくれるまで何もしません」のような人は生きてゆけない。
この村に関して言うと、その点どの村人も非常に能力が高く、自律的であり、常に次の冬、次の春に備えて生活をしているし、自らの能力を高め続けている。
一方で彼らはとても忙しい。村人はすぐに増えないが仕事はどんどん増えていく。余分なコミュニケーションを取る暇は彼らにはないのである。村人が村人コミュニケーションを取らざるを得ない事情はこの辺りにあるのかもしれない。
おわりに
ここに記したいくつかの特徴は、この村だけに当てはまるものではないと思う。
ここよりも大きな村、大きな街でもありうることばかりだ。
例えば他の会社の例でいうと、社内で使っている用語の略称を社外にも送ってくることがある。「TU(タイアップ)」とか。これは考察4(村人は、村外の人がわからないことがわからない)にあてはまる。
何が悪い・何が良いという話ではなく、
- 自分が村(もしくは何らかのコミュニティ)にいて、そこでしか通じないコミュニケーションがあると言うことを理解しよう
- その上で、村の外も理解しよう(いわゆる「ソトのモノサシ」)
ということを伝えたかった。というのがこの記事の真意である。
画像出典: GAHAG